阿弥陀岳@長野県
「え~わかんなぁ~い♡」とか言ってクネクネするような可愛げのある女子になりたかった。
朝出社して、ある日突然私のデスク上に電力会社の変な機械が置かれている事にブチ切れて「これを置いたのはお前か?・・・それともお前か?」と、犯人を割り出すような心の狭さに自分を責めてしまう。
怒るならもっと可愛くぷりっと怒りたいものだが、この性格は母方の祖父譲りなのであろう。とても厳しい人だった。自分にも厳しかったであろう。
私は自分には甘いので、それはまた他のご先祖様譲りかもしれない。
2016年10月
日帰りで赤岳/横岳/硫黄岳の縦走をしようとしたが、寝坊した挙句、登山口までのアクセスに手間取ってしまいスタートが遅れた。
ならば縦走予定に入っていない阿弥陀岳を目指そうとしたのが今回の失敗の要因。
なぜ今まで阿弥陀岳を避けてきたのか?決断した時はまだ寝ぼけていたのだろう。
やまのこ村の駐車スペース(¥1000/日)は満車に近い状態だったが、なんとか小さいスペースに駐車することができた。
6:20 やまのこ村登山口出発
本来なら5時には歩き始めているはずだった。縦走用に書いてあった登山届は出さず、阿弥陀岳への山行予定を記入。
秋晴れで風のない、最高の天気だ。
行者小屋手前にあるヘリポート
8:20 行者小屋到着
トイレには長蛇の列が。この先、トイレはないので済ませておく。30分のロスタイム。
行者小屋から見える阿弥陀岳の山頂
8:50 行者小屋出発
9:40 中岳のコル到着
圧巻のMt.FUJI
風もなくて最高の登山日和。
中岳のコルにザックをデポして、いよいよ阿弥陀岳に取り掛かる。
梯子、ザレ場、急登なんてもんじゃない。一歩間違えれば滑落して命はないだろう。ヘルメットを被っている人といない人がいる。私は被っていない人だ。足元が竦む。
途中、怖くて何度も呼吸を整える。怖いけど、目に入ってくる景色は最高だ。
硫黄岳
目の前を見上げる。あともう少し。私の前を登っていた男性が道を間違えていたが、私は緊張からそれに気付かず付いて行ってしまっていた。目印がないのだ。
う~ん・・・これはちょっと、高所恐怖症の私には無理かもしれない。足がガクガクしているし。頂上まで登ったとしても下山ができない。高所恐怖症の人って、登るのは平気なのだ。怖いのは下りだ。
中岳のコルから15分程登った所で深呼吸をして考えた。
皮肉な事に、高度を上げれば上げるほど周りの景色は良くなっていくのだ。
赤岳へ続くジグザクの登山道
横岳
赤岳
「諦めよう」1人で来ているから、私がリタイヤすることで誰にも迷惑をかけるわけではない。落石をさせないようにゆっくりゆっくりへっぴり腰で下る。
あと15分も登れば山頂だったが仕方ない。高所恐怖症の私の事だから、いつかこんな日が来ると思っていた。
あまりにもへっぴり腰で下山していたので、登ってくる沢山の方が声をかけてくださった。父と同じ年頃であろう年配の男性が「下りこそ気を付けて。ゆっくり時間をかけて下りなさい」と。後ろから来た方に道を譲ったら「下りのガレ場、怖いですよね」と。どの人も自分だって大変な時に励ましてくれるのだ。泣けてくる。
登りにかけた時間以上を使って中岳のコルに到着。登って下った道を見上げる。
お~、怖かった!
11:30 行者小屋到着
「おでんでも食べて帰ろうかな。」そう思わないでもなかったが、そのまま下山。
11:40 ヘリポート
来るとき通ってきたヘリポートに座って時間をかけておやつを食べた。
天気も良いし、まだお昼前だし、お昼寝して帰ろうかなと思ったが、下山した事を家に一報入れたかったので昼寝はしない。
ヘリポートを後にし、振り返ったお山。まるで「またおいで」と言っているよう。
時間はたっぷりあったので、ゴミを拾いながら下山。
苔の八ヶ岳
あと少しで登山口
こんな道を永遠と歩いていたい。本日の好きだなと思う道。
13:50 美濃戸山荘到着
14:00 やまのこ村到着
やまのこ村で働いているお姉さんに「怖くて山頂まで行かれなかったのです・・・」と、泣き言を聞いてもらった。
秋晴れで無風の最高の日に阿弥陀岳登頂を諦めざるを得なかったが、万が一高所恐怖症を克服できた時にはもう一度挑戦したい。今回生きて帰って来れたので、その日はいつかやってくるかもしれないし、やってこないかもしれない。その日がやってきたら、その時はヘルメットを被って挑みたい。