黒斑山
4月に東南アジア最高峰にチャレンジするべく、トレーニングを開始した。
最高峰と言っても富士山より300m位高いだけの山なので、果たしてトレーニングをする必要があるのかとも思うが、股関節の痛みで2年間は登山をしていなかったので、自分の脚で登って下りるにはしっかり準備をしておかなければならない。
脚が痛いからヘリで下山とかはできないのである。
人に迷惑をかけてまでする登山でもなかろう。
雪が降り始めた金曜日の夜、目覚ましをセットしようとして携帯に手を伸ばしかけた。
翌日の予報は大雪。
本格的登山ではなく、あくまでもトレーニングなので天気が悪ければ行かないと心に決めていた。
朝一で山に入る勇者には、私はなれなくてもいい。
中2病ではないので、誰かの敷いたレールの上を歩いても疑問すら感じない。
諦めの人生を歩んでいると楽な方へ楽な方へと流される。
翌朝起きると大雪は降っておらず、庭には5㎝位の雪が積もっていた。
バナナ、チョコパイ、柿の種、おにぎり、水、熱い紅茶を水筒に入れて出発。
10:20に歩き始めた。
向かうは黒斑山。
山でも積雪は麓と変わらない程度だったのでアイゼンを装着。
中コースを行って帰ってこようと思っていたが、トレースがない。
トレースがないということは自ら道なき道を切り開かねばならず、体力を消耗する。
「表コースで行こう」決断は早かった。
誰かの敷いたレールの上を歩くのに躊躇すらない。プライドもない。
私は登山家ではないのでお気楽なものである。
表コースは既に何人もの登山者が通った道ができていた。
積雪は大したことなくても朝一で登った勇者は大変だったと思う。
ちょっと登ると見えてくる麓。
残念ながら雲が多くて富士山は見えなかった。
張り切ってミラーレス一丸を持ってきたのに、電池も入っているのに、SDカードを入れ忘れたことに気付いた時には遅かった。
重い荷物になっただけの使えないカメラを背負って登る。
携帯のカメラで撮るも、天気が良すぎて何も見えないままシャッターをおす。
厳冬期でなければ途中の登山道から浅間山は見えない。
シェルターに着くまでに股関節の痛みが出てきた。
11:45 槍ヶ鞘に到着。
ここから見える浅間山が一番好きだと思う。
槍ガ鞘に着いたと同時に大きな雲が浅間山を包んでいく。
それまでは快晴で風もなかったが、今日の天気もここまでだろう。
トーミの頭を通って黒斑山でお昼を食べる予定でいたが、急遽ここから折り返すことにした。
シェルターまで戻り、風を避けてチョコパイと紅茶を胃に流し込む。
ゆっくりはしていられない。
すぐに体も冷えてきたので、一刻も早く下山しなければ。
登山をしながら考えていることは世界平和でも経済情勢でもなく、「やっぱり頭皮ケアに重きをおいているシャンプーはいいなぁ」とか、「どうしてあのシャンプーはツルハ(ドラッグストア)にしか売ってないんだろう?」とか、どうでもいいことばかりである。
下山途中で歩いてきた道を振り返る。
辺りの山々は黒い雲に包まれて見る事はできなかった。
下山している時にすれ違った登りの人たちは大丈夫だろうか?
年配のご夫婦も2組位いた。
あと10分も歩けば登山口に到着という所で吹雪いてきた。
ホワイトアウトだ。
12:50 無事に駐車場に着いた。
トレーニングとしてはなかなか良いペースだった。
目指す黒斑山には行かれなかったが、トレーニングで命を落とす事があってはならない。